「吹き付け断熱の家なら、冬は暖かく夏は涼しいはず」——そう信じて新築したわが家ですが、現実は想像以上に過酷でした。とくに小屋裏部屋は、夏場に立っていられないほどの猛暑に襲われ続けたのです。
「吹き付け断熱なのに、なぜここまで暑いのか?」——その答えを求めて徹底的に調査した結果、石膏ボードの裏側にはプロでも見逃しがちな「断熱の穴」がいくつも潜んでいることが判明しました。今回は、その欠損を特定し、DIYで修繕した「断熱リカバリー」の全工程を余すことなく公開します。
1. 断熱の不具合を見抜く「3段階の調査」
【Lv.1】体感と隙間風チェック
まずは普段の暮らしで感じる「違和感」を大切にしてください。
- チェック方法:家中の窓を閉めたうえで、換気扇を「強」にして稼働させます。室内が負圧状態になり、隙間があれば外気が勢いよく流入してきます。
- 判明したこと:太陽光発電の配線貫通部から、外気が勢いよく漏れ込んでいました。ここは気密テープで即座に補修しました。
貫通部の補修前は、外の空気がそのまま室内へ流入していました。

テープを巻くだけで、空気の流入はピタリと止まりました。

光ケーブルのCD管も外気が流入していました。見落としがちな箇所なのでチェック必須です。

【Lv.2】サーモグラフィーで温度差を可視化(重要!)
肉眼では捉えられない温度差をあぶり出してくれるのが、サーモカメラです。
- 使用機材:iPhoneに挿すだけで使えるFLIR ONEを使用。
- 判明したこと:石膏ボード越しでも、梁(はり)の周辺が真っ青(=冷気が侵入)になっているのが一目瞭然。吹き付け断熱の死角に大きな穴が開いていることが判明しました。


見た目は何ら問題なさそうな天井でも、サーモグラフィーカメラを通すと温度差がはっきりと浮かび上がります。

冬場の撮影なので、青く写っている部分は温度が下がっている証拠。とくに濃い青の箇所は何らかの異常がある可能性が高いと判断できます。
石膏ボード裏のチェック方法
剥き出しになっている天井裏は判断しやすいのですが、石膏ボード裏の温度差はサーモグラフィーで見えてもすぐには手出しできません。室温との差が大きいと不安になりますよね。わが家のように手の届かない場所に異変がある場合は、次のステップに進みましょう。


LED照明が天井に埋め込まれている場合は、それを取り外せば天井裏を少しだけ覗くことができます。スペースが狭いので、手とスマホを差し込んで撮影し、あとから画像で確認するのが効率的です。明らかな異常があれば、工務店に相談してみましょう。

【Lv.3】石膏ボード解体による直接確認
最終手段として、もっとも怪しい箇所の天井ボードを剥がして直接目視しました。そこで目にしたのは、「剥がれ落ちたウレタン」と「4cmもの隙間」でした。夏場はここから55℃の熱風が室内に流れ込んでいたのです。剥がし方とコツは次のセクションで解説します。
2. ゴミを最小限に!石膏ボードの丁寧な取り外し術
DIYリフォームで意外と頭を悩ませるのが、石膏ボードの処分費用です。石膏ボードは防火上の重要素材であるため処分コストが高く、個人から出る少量の石膏ボードを無料で引き取ってくれる業者はまずいません。だからこそ、壊さずに外して再利用できれば、費用もゴミも最小限に抑えられます。
- ビスの位置を特定:クロスの下に隠れているビスを磁石などで見つけます。
- パテを削る:彫刻刀でビスの頭が露出するまで丁寧にパテを削ります。
- 1本ずつ抜く:インパクトドライバーで丁寧にビスを抜けば、ボードを割らずに回収できます。
ビスの位置を特定する
クロスの下に隠れているビスの位置を磁石で確認し、鉛筆でマーキングしておきます。クロスはどのみち張り替えるので、汚れても問題ありません。

半円の彫刻刀でパテを削る
彫刻刀などでビスの頭が見えるまでクロスとパテを掘り下げます。ビスが見えてもネジ穴の十字部分にはパテが入り込んでいるので、尖った彫刻刀やカッターでドライバーが噛む程度まで削り出します。粉塵を吸い込まないよう、マスクを着用して作業してください。

ドライバーでビスを順に外していく
四隅以外のビスをすべて外していきます。1本でも残っているとボードは外れませんので、外れにくいときは見落としているビスがないか何度も確認しましょう。

隙間に工具を差し込んでボードを外す
石膏ボードは隙間なくピタリとはまっているので、1枚目を外すのが最大の難関です。1枚外せれば、2枚目以降は格段に楽になります。私は力を入れすぎて少し割ってしまい、後から補修することになりました。



石膏ボードの裏側はどうなっていたか?
石膏ボードを開けた瞬間、明確な「風」を感じました。これはもはや隙間風レベルではありません。
何が起きていたかというと、小屋組みの木材をはめ込むために断熱材をカットしすぎたうえに、天井に吹き付けたウレタンが天井面に密着せずに自重で脱落しており、薄くなったウレタンが割れて穴が開いている状態だったのです。

たった5年でボロボロになった断熱材😭

本来、天井ウレタンは「通気ボード」と呼ばれるダンボールに似た素材の上に吹き付けられているため、穴が開いていてもその先には空間がないはずです。ところが、隙間にカメラを突っ込んで内部を撮影してみると、ウレタンが完全に剥がれて浮いている状態でした。さらに最悪なことに、ちょうど通気ボード同士の重なり部分に当たっており、そこから猛烈な隙間風が室内に向かって吹き込んでいたのです。

3. 実録!ウレタン断熱のリカバリー手順
穴の開いたウレタン断熱材は、上からスプレーするだけでは密着してくれませんでした。本来ならホームセンターで買えるウレタンスプレーで簡単に塞がるはずですが、冬の寒さと乾燥、夏の暑さと湿気を5年も浴びてボロボロになった断熱材は、そう簡単には補修を受け入れてくれませんでした。
- 古いウレタンの除去:劣化した部分や密着していない部分はカッターで大きく切除します。
- 通気層の確保と穴埋め:屋根の通気層を塞いでしまわないよう注意しつつ、市販のウレタンスプレーで隙間を「手術」のように埋めていきます。
- 仕上げ:完全に硬化したらはみ出た部分をカッターでトリミングし、気密テープでさらに補強します。
マニアック編:ウレタン断熱の補修方法
「屋根断熱のウレタンに穴が開いてしまった」という内容のXポストを何度か投稿しましたが、有用な情報はほとんど集まりませんでした。天井ボードを剥がして裏側を覗くなど、工務店からすれば絶対にやってほしくない行為ですから、情報が乏しいのも当然かもしれません。

吹き付けウレタンを大胆にカットして除去する
吹き付けウレタンをここまで広範囲に切除してやり直した事例は、ほぼ世の中に存在しないでしょう。一度施工された後の通気層を見たことのある工事担当者さえ、ほとんどいないと思います。

断面図で見ると、通気スペーサーから13cmしかない隙間のうち、4cmほどウレタンが乖離して落下していました。さらに小屋裏施工ボードの下地木材を組むため、下側からもウレタンがカットされており、薄い箇所では2〜3cmしか厚みが残っていませんでした。これではウレタンが割れて隙間ができても無理はありません。

邪魔だった小屋組みの木材は、いったんカットして作業しやすくしました。まるで手術のようです。

通気ボード下部の隙間をウレタンスプレーで埋める
今回もっとも厄介だったのは、通気スペーサー同士の重なり部分がぱっくりと開いていた点です。下から押し上げながら、断熱材で隙間を塞いでいきます。

こんな感じで隙間が埋まり、スペーサーが閉じたように見えます。とはいえ、この段階ではまだ風がスースーと漏れてきていました。

ボード系断熱材を型紙どおりにカット
次に断熱材を用意します。今回は吹き付けウレタンが80mmだったので、40mm厚のフェノバボードを2枚重ねて穴を埋めることにしました。フェノバボードは新品では高額ですが、ヤフオクやメルカリで端材を必要分だけ調達するのが賢い方法です。建築資材は中古の端材を活用すると、DIY費用が大きく抑えられます。
私は破れたクロスを使って型を取りました。左右上下の隙間はウレタンスプレーで埋めるので、ざっくりした型さえ取れれば十分です。


ウレタンで密着させながらボード系断熱材をはめ込む
ここが今回最大のポイントであり、検索しても情報がまったく見つからなかった工程です。
ボード断熱材のまわりに先にウレタンスプレーを吹きかけ、接着剤のように使うのがコツ。すると、はめ込んだフェノバボードのまわりで時間をかけて少しずつウレタンが膨らみ、パンパンに膨張して隙間を完全に埋めてくれます。
逆に、断熱材をはめ込んだ後に下からスプレーした場合は失敗しました。上に向かって噴射しても時間とともに膨らみますが、自重で落下する分があるため、隙間がうまく埋まらないのです。
こちらが成功例。見た目からして隙間がありません。手をかざしても風はまったく感じませんでした。

こちらが失敗例。見た目ほど気密が取れておらず、手で触れると隙間からの風を感じました。

断熱性の改善結果
くり抜いた部分を完全に塞ぐと、周辺の吹き付けウレタンとの温度差がまったくなくなりました。おそらく、もとの吹き付けウレタンよりも断熱性能は強化されています。

付加断熱と気密シート処理
グラスウールをパンパンに詰め込み、タッカーで気密シートを留めました。可能なら天井面は可変透湿シートを使うのがベストかもしれません。

石膏ボードとクロス貼り
石膏ボードを元の位置に戻します。割ってしまった箇所だけ新品に差し替えました。普段使いする部屋ではないので、パテ処理やクロス貼りは多少粗くても問題ないと判断しています。

多少の継ぎ目は目立ちますが、許容範囲内の仕上がりです。

小さな穴ならウレタンスプレー一本で簡単補修
こちらの大きな穴は、ウレタンスプレーを奥からしっかりと吹き込んで塞ぎました。今回はピンク色のスプレーを使用。

こちらは目視ではほぼ判別不可能なレベル。サーモグラフィーカメラで確認し、超接近してようやく判明する程度の小ささです。ボコボコした吹き付け断熱の表面で、こんな引っかき傷のような隙間を見つけ出すのは至難の業。施工後の厚みチェック作業の跡だと思われます。


穴のなかへウレタンスプレーを流し込んで完了です。

4. この記事で紹介した「断熱DIY 三種の神器」
今回の修繕で実際に使い、効果絶大だったアイテムを紹介します。
FLIR ONE Pro (iPhone/iPad用)
「見えない熱」を可視化する、DIY施主にとって必携のツール。使い終わった後にメルカリでも高値で売れるので、実質的にはかなり安く使えます。
1液性発泡ウレタンスプレー
ちょっとした隙間埋めに最適。ホームセンターよりAmazonでまとめ買いしたほうが割安です。
下地探し用磁石
小さくて使い勝手のよい下地探しです。価格も安く、シンプルな機能で十分。失くさないようにだけ注意!
5. まとめ
「吹き付け断熱だから安心」と思い込んでいましたが、現在では吹き付け断熱の標準厚みも増えてきており、わが家のような事態に陥る可能性は以前よりかなり低くなっているはずです。とはいえ、最大の安心材料は「断熱材を吹いた直後に気密測定(C値測定)を行うこと」に尽きます。石膏ボードを貼る前なら、手直しも一瞬で終わるからです。
もし築10年以上の家に住んでいて「冬寒い・夏暑い」と感じるなら、それは断熱欠損のサインかもしれません。私はサーモグラフィーカメラと風量計を使って欠損部位を特定していきましたが、目視だけではほぼ不可能です。新築なら最初から中間気密測定で気密の弱い部分を確認するのが一番確実でしょう。
わが家の天井不備はこのとおり無数にありました。すべて自力で塞ぎましたが、3か月以上の時間と費用がかかっています。新築建築時の数万円の測定費を「高い」と感じる方もいますが、後から補修しまくる時間と労力を考えれば、簡単に元が取れる金額です。
梁と柱のつなぎ目部分や天井と小屋組みの取り合いなど、見た目ではほぼ判別できない箇所が要注意ポイントです。






