「せっかく建てた新築なのに、冬になると脱衣室だけが妙に寒い……」 そんな違和感を抱えていませんか? 実はその原因、図面には現れない「壁の中の施工ミス」かもしれません。
我が家でも直面したこの問題。プロに任せたはずの新築でも、後付け工事ひとつで家の性能はガタガタになります。今回は、サーモグラフィーで冷気の侵入経路を特定し、素人でもプロ以上の精度でリカバリーした「換気ダクト貫通部」の修繕記録を公開します。
【1. 調査:目に見えない「冷気の正体」をデータで暴く】
まずは「なんとなく寒い」という感覚を、客観的な数値に変えることから始めました。
- サーモグラフィーでの発見: 天井裏の換気ダクト付近を撮影すると、石膏ボード越しなのに特定の場所だけが真っ青(低温)に。
- 違和感の正体: 表面はコーキングで密閉されているのに、なぜここだけ温度が低いのか? これは「隙間風(漏気)」ではなく、壁の内部で外気が直接入り込んでいる証拠でした。
ビフォー:脱衣室上の換気ダクト
見た目はごく普通。ただ、サーモグラフィーカメラで覗くと明らかな異変が浮かび上がります。

サーモグラフィーで見ると、なぜか温度差がエグく出ています。石膏ボードとコーキングでしっかり密閉されているはずなのに、これだけの温度差が出ている。「石膏ボードを切り開いたら何が出てくるのか……」と気になって仕方がありませんでした。

【2. 衝撃の事実:壁の裏側で起きていた「施工不良」】
意を決して、脱衣室の天井付近の石膏ボードを「オペ(開口)」しました。そこで目にしたのは、耳を疑うような光景です。
- ズタボロの断熱材: ダクトを通すための穴あけを失敗したのか、断熱材が引きちぎられた状態。
- 防水シートの破損: 外壁の透湿防水シートが切り裂かれ、わずか1枚のシートの向こう側はほぼ「外気」でした。
- 原因の特定: 新築時、図面確定後に「ガス温水暖房」を追加した際、設備業者が強引にダクトを通した形跡。後付けオプションが家の気密・断熱を破壊した瞬間でした。
石膏ボードを切り開いてオペ
階間空間なので、特に見栄えを気にする必要はありません。思い切って石膏ボードをカットし、切り開いてみました。すると、ダクトの穴あけを失敗したような跡が左側にハッキリと残っていたんですよね……。

その失敗跡を開けてみると、なんと間柱に当たっていました。しかも、断熱材はズタボロ。

その奥は、ほぼ外気。外部のパネルまで切り裂かれていて、残るは透湿防水シート1枚のみ。しかも隙間がまる見えです。これでは室内まで冷気が入ってきて当然です。

【3. 実践:DIYで「完璧な気密・断熱」を取り戻す手順】
業者にやり直しをさせても、壁を剥がしてまで丁寧に補修してくれるとは限りません。ここからは「施主だからこそできる」丁寧なリカバリー術を紹介します。
① ダクトの取り外しと清掃
気密をしっかり取るには、まず気密シートをきれいに補修してから、改めてダクトを貫通させる必要があります。そこで一旦、外壁側からスパイラルダクトを取り外すことに決めました。なかなかの大工事です。

コーキングを切って、ビス1本を取り外し、強引に引き抜きます。

すると見えてきたのは、ずさんな工事跡。最初の建築図面ができた後にガス温水暖房を追加したため、後付けでダクト貫通を行い、その施工に失敗していたようです。最初から図面に落とし込まれていれば、こんなミスにはならなかったはず。
とはいえ、ガス会社に設備費用の一部を持ってもらっている経緯もあるので、文句ばかり言ってもしょうがない。よく見るとダクト貫通位置が、ちょうど防水シートの上下の重なり部分にかかっていました。気密が極端に悪かったのは、重なった部分から防水シートがズタズタになってしまい、運の悪さも重なった結果だったようです。

② 貫通部の防水・気密補修(最重要!)
ここで使用するのは、プロの現場でも信頼の厚いフクビ化学工業の『ウェザータイト(パイプ用)』と、ハウスメーカー界隈でも定番の気密テープ「光洋化学 エースクロス011」です。
- 破れた防水シートのフチを気密テープで徹底的に補強。
- ウェザータイトを挿入し、ダクトと壁の隙間を物理的にシャットアウト。
まずは気密テープで防水シートのフチを強化します。粘着力・耐久性ともに優秀で、貼り直しもしやすい一品。

続いて、貫通部用の防水資材「ウェザータイト」でダクト貫通の前準備を行います。フクビさんの定番商品です。
内側と外側のサイズがほぼ同じため、隙間にほとんど手が入りません。時間をかけてゆっくり作業していきます。

外側からはテープ貼りができないので、ダクトフードを設置・固定したあとに、内側からテープを貼っていく流れです。

③ ウレタン断熱材での充填
ダクトを戻したあと、周囲の隙間に発泡ウレタンを吹き付けます。今回使用したのは、上向きでも噴射できる「Sista 発泡ウレタン M5250」。狭く、向きが自由にとれない場所での作業に本当に重宝します。
- コツ: 想像以上に膨らむので、控えめに吹いておき、硬化後にカッターでスキンカットして平らに整えます。

膨れあがった部分はスキンカットで処理。

④ 石膏ボードの復旧
カットした石膏ボードを戻し、継ぎ目をコーキングで処理。見栄えよりも「漏気を止めること」を最優先で仕上げました。

フード取り付け時のコーキングは、正直うまくいきませんでした。高所作業は本当に難しい。とはいえ、絶対に室内側に水が入らない構造になっているので、コーキングはこれでよしとしました。

使用した部材
今回の補修で活躍してくれた3アイテムです。同じトラブルに直面した方は、まずこの組み合わせを揃えれば気密DIYに困りません。
気密テープ(光洋化学 エースクロス011)
ウェザータイト 100φダクト用(フクビ)
発泡ウレタンスプレー(シスタM5250)
【まとめ:施主が「最後の砦」になるということ】
今回の修繕にかかった費用は、部材代だけでわずか数千円。それでも、得られた「暖かさ」と「安心感」は、数十万円のリフォームに匹敵します。
「プロがやったから大丈夫」と過信せず、サーモグラフィーを手に自分の家を疑ってみてください。見えない欠損を見つけ、自分の手で直す。これこそが、賢い施主が実践する「後からDIY新築」の真髄です。





