吹き付けウレタン断熱って、こんなにカットしても大丈夫なの?
大丈夫じゃなかったね。でも、なんとか補修できたよ。
我が家の天井は吹き付けウレタンで、建築中に何度も見に行って「キレイに吹き付けられているな」「結構あったかいな」と思っていましたが、よくよくサーモグラフィーカメラで調べてみると不具合の連発でした。
もし、あなたの家が吹き付け断熱で気密測定を行なっていないという油断をしているならば、暑い日や寒い日に天井裏を見てみたほうがよいかもしれません。人の目で見てもわからなくても、サーモグラフィーカメラを使うと石膏ボードの上からでもしっかりと温度差が確認できます。
施主点検Lv1目視+体感
暑くて入りたくない小屋裏部屋
1年目〜2年目は夏と冬はほぼ立ち入りませんでした。エアコンもないので、長時間いられるものではありませんでした。意を決して屋根裏に入り込み、確認できたのが配管貫通部の隙間です。明らかに隙間風がビュービュー入り込んできました。
隙間風を確認するときは、家の窓を全て締め切り、キッチンの換気扇を強にすると確認しやすいです。
太陽光発電パネルの配線貫通部の気密補修
CD菅に配線を通しただけなので隙間風が多く入っていました。パッキンを詰めながら配線を通すと良いらしいですけど、すでに配線を通した後なので、気密テープでぐるぐる巻きにして隙間を閉じました。
配線貫通部 リカバリー前
配線貫通部 リカバリー後
屋外からの情報線にも注意
光ケーブルのCD菅も外気が流入していました。ここも確認しましょう。
施主点検Lv2 サーモグラフィー
次にiPhoneに取り付けられるサーモグラフィーカメラを購入し点検してみました。3万円程度かかりましたが、不要になった際はメルカリで高値で売却できますので、恐れずに購入しました。
サーモグラフィーカメラでチェックするときのポイントは2点です。
前回同様、家の窓を全て締め切り、キッチン換気扇を強にして屋内を負圧にして、隙間風の確認しやすくする。
室内と室外の温度差の激しい日をあえて選んで、天井裏に潜入する。
暑さで倒れないように無理はしないこと!
目視で判別しにくいウレタン吹き付け断熱の補修
ここからがこの記事の本番です。DIYでウレタン吹き付け断熱の補修を行なっている記事は皆無です。もし困っている方がいたら参考になるかもしれません。
梁の裏に大きな空洞
目視でわかりますか?プロでも見逃してますからね。施主点検では見ぬくのは難しいと思います。
遠くからでもサーモグラフィーカメラを使うと一発でわかります。室温は20℃くらいですけど、屋外の1.8℃の空気がガンガン流入してきています。この場所は梁の上であるため、下から職人さんが吹き付けを行なった場合は死角となって断熱材の吹き付けを失敗したのでしょう。気密測定を行なっていれば、この大きな穴は明らかに数値で出るので防げる部分でした。2017年は気密測定なんて全然情報なかったんですよね。
この大きな穴は、ウレタンスプレーを奥からしっかりと吹きかけ塞ぎました。今回はピンクのスプレー。
ウレタンの厚みの点検跡
どうやら、吹き付け断熱の厚みを確認するためにサクっとさして確認しているようです。確認した後にもうひと吹きしてくれれば良いのにと思いますが、ホームセンターで購入したウレタンスプレーをかけて補修をしました。
これまた目視ではほぼ判別できません。超接近してようやくわかりますが、ボコボコした吹き付け断熱の中でこの小さな引っかき傷みたいなものを見つけるのは困難です。
補修はノズルを少し傷穴に突っ込んでからスプレー。すぐに膨らんでウレタンが垂れてくるので、下には新聞紙などで養生しておいてください。
石膏ボード裏について
サーモグラフィーカメラがあると、クロスと石膏ボードを貫通して温度差が見えるようになります。実際には、石膏ボードの奥底から外気が侵入していると、その周りが明らかに冷やされたり、熱すぎたりするので、一目瞭然で何かおかしいことがわかります。
ただし、点検口がない限りそれ以上のことは分かりません。石膏ボードはビスでしっかりと固定されていますので、明らかに何かおかしくても雨漏りでもしてこない限り、石膏ボードをあけようとはしないでしょう。
見た目は普通に見えても、サーモグラフィーカメラを使うと温度差がはっきりと出ます。
冬場の撮影なので、ところどころ青い部分が温度低下をしている部分です。特に濃い部分は何かしら異変があるのではないかと推測できます。
LED照明がある場合は、LED照明を開けることにより少しだけ天井裏を見ることが可能です。とても狭いので、手とスマホだけ入れて撮影して、あとから画像で確認するのが効率良いです。明らかな異常があったら、工務店に相談してみましょう。
施主点検Lv3 石膏ボード外して確認
すでにここまでお読みの方なら薄々感じているとは思いますが、超大掛かりです。石膏ボードを外すには壊すか、ビスを見つけて全て外すしかありません。また、天井面のクロスも破けますので、貼り直す必要があります。
この大掛かりな石膏ボード外しを、ある一箇所が気になって気になって夜しか寝れない日々が続いたため、一枚だけ剥がしてみることにしました。
一番気になっていた一枚を外してみる
5年以上経過しているのでクロスの劣化は仕方がないかなと思いましたが、よくよく見てみると明らかに天上側から室内に向かって汚れています。小屋裏部屋の四隅を見てもここだけ異常に汚れていたので、開けてみることにしました。
石膏ボードを外す手順
施工ボードを壊して天井をやり直すのも一つの手ですが、石膏ボードって捨てる方が高いんです。あまりコストを掛けたくないDIYなら、壊さずに丁寧にボードを外して石膏ボードのゴミを出さない方法をとりましょう。以下は、ゴミを最小限にする方法です。
ビスの位置を特定する
クロスの下にあるビスの位置をまずは確認し、えんぴつでチェックします。クロス張替えを行うのでクロスは汚れても大丈夫です。
半円の彫刻刀で削る
彫刻刀などでビスが見えるまでクロスとパテを掘ります、ビスが見えたら、十字の中にまでパテが入り込んでいますので、尖った彫刻刀やカッターでドライバーが引っかかる程度まで削ります。削り粉を吸い込まないように、マスクをしっかりとして作業しましょう。
ドライバーでビスを外していく
四隅を残してビスを全て外していきます。1本でも残っていると外れませんから、外れにくい場合はビスがどこかに残っていないか何度も確認しましょう。
隙間に工具を挟み石膏ボードを外す
ピッタリ隙間なく石膏ボードがはまっているので、1枚目を外すのが一番大変です。1枚外してしまえば、2枚目からは難易度がグッと下がります。私は力を入れすぎて少し割ってしまい、あとで補修を行いました。
石膏ボードの裏側はどうなっていたか?
石膏ボードを開けた瞬間に風を感じるようになりました。もはや隙間風ではありません。
何が起こっていたかというと、小屋組みの木材をはめこむために断熱材をカットしすぎているのと、天井に吹き付けたウレタンが天井面に接着せずに落下してしまい、薄くなったウレタンが割れて穴が空いている状態でした。
本来天井ウレタンは通気ボードというダンボールみたいな素材に吹きかけているので、穴が空いていたとしてもその先には空間ははないはずです。しかし、隙間にカメラを突っ込んで内部を撮影してみると、完全にウレタンが剥がれて浮いている部分でした。しかも、ちょうど通気ボードと通気ボードの重なり部分があり、猛烈な隙間風が室内に向けて入ってきます。
マニアック編 ウレタン断熱の補修方法
この屋根断熱のウレタンがポッカリと穴が空いてしまったというXポストを何度か行いましたが、なかなか助けてくれるような情報が出てきませんでした。断熱が割れているだけでなく、夏場には通気層側から55度の高温の空気が室内側に流れ込んでいました。それは小屋裏で過ごせませんよね。
ちなみに、ウレタンスプレーを穴の奥に吹きかけてもうまく穴は塞がりませんでした。切り刻んだウレタンや水分を含んだ劣化したウレタンには、その上からウレタンを吹き付けても密着せずに、隙間からガンガン空気が侵入してきました。この場合は、断熱材ではなく通気層をしっかりと閉じないとダメのようです。
吹き付けウレタンを大きめにカット
吹き付けウレタンをこれほどまでにカットしてやり直した事例はほぼないでしょう。一度吹き付けた後の通気層を見たことある工事担当者も少ない気がします。
断面図で見ると通気スペーサーから13cmの隙間しかないのに、4cmほどウレタンが乖離して落ちてしまっています。さらに小屋裏施工ボードの下地の木材を組むために、下側からウレタンをカットしてしまったので、薄い部分では2〜3cmくらいしか厚みがありません。これではウレタンが割れて隙間が発生したとしても仕方がない施工です。
邪魔だったので小屋組の木材は一旦カットして作業しやすいようにしています。手術のようですね。
通気ボードの下部の隙間をウレタンスプレーで埋める
今回最も厄介だったのが通気スペーサーの重なり部分がぱっくりと開いていたことです。ここを下から押し上げながら断熱材で埋め込みます。
このような感じで隙間が埋まり、スペーサーが閉じたように見えます。ただ、これでもまだスースー空気は漏れてきます。
ボード系断熱材を型紙に合わせカット
まず断熱材を用意します。今回は吹き付けウレタンが80mmでしたので、40mmのフェノバボードを二重にしてこの穴を塞いでいきます。フェノバボードなどは高額ですが、ヤフオクやメルカリで端材を必要分だけ手に入れましょう。建築資材は端材の中古調達がDIYにはとてもお得です。
私は破けたクロスを使って型取りしました。左右上下の隙間はウレタンスプレーで埋めるのでざっくりとした型が取れれば問題ありません。
ウレタンで密着させながら断熱材をはめ込む
ここが今回の最大のポイントであり、検索しても全く出てこなかった部分です。
断熱材の周りにまずウレタンスプレーを吹きかけ、接着剤のようなイメージで使います。すると、はめ込んだフェノバボードの周りを時間をかけて少しずつウレタンが膨らんでいき、パンパンになって隙間をなくします。
逆に、断熱材をはめ込んだあとに下からウレタンをスプレーしたら失敗しました。上に向かってスプレーをしても時間が経つにつれて膨らみますが、落下もするので隙間がうまく埋まりませんでした。
こちらは成功例。見た目からして隙間がないですよね。手をかざしても全く隙間風はありません。
これは失敗例。見た目ほど気密は良くないため、手でも隙間から風を感じました。
断熱性の改善
くり抜いた部分を完全に埋めると、吹き付けウレタンと温度差が全くなくなりました。おそらく、吹き付けウレタンより断熱性は強化されています。
内付加断熱と気密シート処理
グラスウールをパンパンに詰めてタッカーで気密シートを留めています。可能ならば天井面は可変透湿シートが良いかもしれません。
石膏ボードとクロス貼り
石膏ボードを戻します。割れてしまった部分のみ新しくしました。普段使う部屋ではないので、パテ処理やクロス貼りは多少下手でももんだいないと判断しています。
多少の継ぎ目は目立ちますけど許容範囲です。
気密測定は断熱材施工後の中間時に行うべし
私はサーモグラフィーカメラと風量計を使い、欠損部位を特定していきましたが、目視では無理です。最初から中間測定でしっかりと気密の悪い部分を確認した方が良いでしょう。我が家の天井不備はこんな感じで無数にありました。全て自力で塞ぎましたが3ヶ月以上の時間と費用もかかりました。新築建築時は数万円が高い!という方もいますが、我が家のように後から補修しまくっていたら、数万円の測定費など簡単に元が取れるくらいの金額です。
梁と柱のつなぎ目部分や天井と小屋組みの間など、見た目ではほぼ判別できないので気をつけましょう。
当記事で使用したグッズはこちら
スマホ接続型サーモグラフィーカメラ
本格的なサーモグラフィーカメラより、使用後に売却できるのがオススメ。本格的なサーモメラになると精度が上がりますが、価格も数倍となります。
下地探し用磁石
色々使いましたが、これが一番小さくて使いやすかったです。
彫刻刀
なんでも良いです。小学生の子供がいる場合は子供に借りましょう。
断熱材
お好みで。ヤフオクなど活用すると高性能品を安価にゲットできます。ホームセンターの断熱材でも十分です。
ウレタンスプレー
吹き付けウレタンの穴を補修する場合は、接着剤として周りに塗ってから取り付けますので、少量で十分です。また、断熱性能も求めてはいないため、安価な小さなスプレーボトルにしましょう。用途も天井用や壁用などの専用でなくても大丈夫です。
気密シート・クロスなど
これはモノタロウやアウンワークスなどでネット購入しました。
DIYでリカバリーしたい方は
気密改善には根気が必要です。一発ですべての改善ができるわけではなく、一つ一つ丁寧につぶしていく必要があります。また、住宅省エネキャンペーン2024年の断熱材の補助金を活用すると、部材コストを抑えることができます。興味がある方はご相談ください。